昨年2月6日、東京都板橋区の東武東上線ときわ台駅で、電車に飛び込もうとした女性をかばって6日後に亡くなった警視庁の宮本邦彦警部=享年53=の伝記絵本『伏(ふ)してぞ止(や)まん ぼく、宮本警部です』(高木書房)が刊行された。筆者の山口秀範さん(59)はきょう2日、都内で営まれる1周忌法要で本を霊前にささげる。
山口さんは、福岡市の幼稚園などで偉人の伝記を語る活動をしている。遺族や住民、同僚らに話を聞いて文章にしたため、竹中俊裕さんが絵をつけた。
運動が苦手で警察学校では“前代未聞”といわれた自転車の練習に人目を気にせず励んだ。交番に拾ったお金を届けた女児の母親に「うんとほめてあげて」と電話した。地元の小学生には「おまわりさん」でなく「宮本さん」と呼ばれた。そんなエピソードから警部の人柄が伝わってくる。
題名の「伏してぞ止まん」は「精いっぱい努力した上でもう一歩踏みだし、うつぶせに倒れるまでやめるな」という意味だ。幼いころに父親に教えられた言葉。それは警部の姿勢そのものだった。「宮本さんが大切にしたことの一つ一つを知って、誠と勇気を私たちはもらったのだと感じた。偉人は身近にいるんですね」と山口さん。
絵本に一文を寄せた前警視総監、伊藤哲朗さん(59)は「当時は交番に入りきらないほど手紙が届き、みんな家族で話し合ったのだなあとしみじみと感じた。本を親子で手にとって、人々のためにわが身を顧みず尽くした至高の精神にふれてほしい」と話していた。