【モスクワ=内藤泰朗】ロシア次期大統領への選出が確実視されるメドベージェフ第1副首相は1月31日、南部クラスノダールで開かれた同国財界人らの経済会議で演説し、「外国のハイテク企業を買収するときだ」と述べ、積極攻勢に出るよう大号令をかけた。石油輸出収入の一部を将来のために貯蓄してきた同国は、巨額の国家基金を投資に向ける姿勢を示しており、欧米ではロシアの外国進出を警戒する声も上がっている。
報道によると、会議には、石油などエネルギー分野をはじめとするロシアの最有力企業の社長ら500人以上が出席。メドベージェフ氏は、財界トップたちに「外国企業買収は重要課題だ。中国のように積極的に進めるべきで、われわれもできるはずだ。そうすれば、わが国企業の近代化に不可欠な製造機械の外国輸入依存度を下げるなどの問題を解決できる」とげきを飛ばした。
さらに、ロシア政府は「世界の市場でロシアの財界の支援をすることになる」と約束し、外国企業の買収に豊富な国家の資金が使われる可能性を示唆した。
同氏は、買収を視野に入れる具体的な企業名には言及しなかったが、ロシアの国営企業はすでに欧州各国のガス供給会社や石油精製会社などの株式を積極的に購入。欧州のハイテク企業のシンボルであるエアバスの株式買収も狙っている。
一方、ロシアでは1月30日、最重要輸出品である石油価格の将来の下落に備え創設した国の安定化基金を解消し、投資と運用を念頭に置いた新しい国家資産基金を発足させた。
ロシアは昨年、この安定化基金の資金で、新技術の開発や2014年のソチ冬季五輪開催準備を行う巨大国策会社(ゴスコルポラツィヤ)を次々と創設。同基金は3兆8500億ルーブル(約17兆円)を超え、毎年5兆円規模で膨張しており、この巨額な基金が外国企業の買収に使われ、ロシアにいずれ主要産業を支配されてしまうのではないか、との強い警戒感が欧米諸国では出ている。
しかし、こうした欧米の懸念や警戒に対し、ロシア財務省のパンキン次官は「何を恐れるのか。恐れるのではなく(ロシアの投資に)期待する必要があるのではないか」と反論する。
欧米の株式市場の下落で、外国企業買収に割安感が出てきたとの見方がロシアでは強く、豊富な石油マネーを追い風にした強気の姿勢と経済の拡張主義が強まるのは確実とみられている。