【カイロ=村上大介】パレスチナ自治区ガザ地区とエジプトとの国境の壁が爆破され、数十万人に及ぶガザ住民がエジプト側に流入した問題で、エジプト治安当局は31日までに国境の通過点を2カ所に限定し、住民の流れを絞ることに成功した。エジプトは、今後の国境管理のあり方について、穏健派ファタハを率いるアッバス自治政府議長と、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの双方と協議しているが、双方が国境管理にあたると主張し、収拾策はみえていない。
エジプト当局は、国境から西に約40キロの町、エルアリシュへのパレスチナ人の流入を完全に遮断し、治安部隊が残留しているパレスチナ人の捜索に当たっている。国境のエジプト側にあるラファハでは、依然、少数のパレスチナ人の姿がみられるが、当局が3日間にわたり一般商店への物資補給を制限したため、ガザ住民が購入できる商品はすでに底を突いている。
エジプト政府は、イスラエルの完全封鎖で困窮状態に陥ったガザ住民がエジプト側に爆発的な勢いで流入するのをいったんは黙認し、強硬手段に訴えることなく、事態の収拾に成功しつつある。しかし、エジプトにとって、イスラエルが完全封鎖してきたガザ地区とエジプトとの物資や住民の往来をどこまで緩和し、国境管理をどのような形に収めるのかという面倒な課題が残されている。
エジプト政府は、ハマスによるガザ地区の武力制圧で決定的な亀裂が入ったファタハとハマスの代表をカイロに招き、個別の協議に入った。30日にムバラク大統領と会談したアッバス議長は記者団に、昨年6月にハマスがガザ地区を武力制圧し、ファタハを追放したことを非難し、「ハマスが『クーデター』以前の状態に戻ることを受け入れない限り、一切の対話に応じない」と強調した。
一方、ハマス代表団は31日、エジプト情報機関トップと協議に入ったが、「ハマス抜きの安定した解決策はあり得ない」と主張している。
エジプトは、ガザから追放されたファタハ治安部隊が再び国境管理に関与することを望んでいるとされ、米国やイスラエルもファタハによる国境管理案を支持しているが、国境のガザ側にはハマスが治安部隊を配置しており、ファタハ管理案は現時点では実現性が少ないのが実情だ。