◇改造ハウスで筋トレ
野球部グラウンドの一塁側に1棟のビニールハウスが建つ。野菜を育てているわけではない。「よしッやるぞ!」。丸山亮太主将(2年)の掛け声で柔軟体操が始まった。選手たちが筋力アップに励む風変わりなトレーニングルームだ。「雨の日は、ブルペンでバッティングの練習ぐらいしかできなかったが、ここができてから雨天時の過ごし方も変わりました」と伊藤仁コーチ(26)は説明する。
トレーニングルームは03年4月、糟谷寛文監督(56)が室内練習場代わりに中古のビニールハウスを改造することを提案。父母会やOB会が協力して資金を出し、田原市内の農業資材製造会社に勤める彦坂良和さん(64)が完成させた。効果は早速表れ、翌年秋の県大会でベスト8入り。05年から3年連続でセンバツの21世紀枠候補校に推薦された。
ビニールハウスのほか、打撃練習で使う防護ネットには、中古の魚網を譲り受けるなど、手作りの設備は多い。糟谷監督は「今の成章野球部があるのは地元の人たちのおかげ」と、しみじみと話す。
成章のセンバツ出場を祝う懸垂幕が31日掲げられた田原市役所。卒業生でもある鈴木克幸市長(63)は昨年春の市長選で初当選した。「市長になって1年たたないうちに母校の快挙に巡り合えてラッキー。成章は東三河出身の選手ばかりで、全国の檜(ひのき)舞台を踏むことは感慨深い」と市長室で相好を崩した。
鈴木市長自身も“成章の広報マン”として名刺に「甲子園出場校・成章の古里」という趣旨の文字を印刷し、対外的にPRするつもりだ。農業産出額全国一とはいえ、全国的な知名度が足りない田原市。「甲子園での成章球児の活躍を見て、全国の人たちが選手の古里に興味を持ってもらえれば」と願う。
「涙が出ました」「成章生として誇りに思います」……。市内でパソコン教室を開き、05年から成章野球部のホームページ(HP)作りを担当する鈴木正幸さん(54)の元には応援メッセージが続々と舞い込む。山田貴三教頭(54)と成章で同級生の間柄だ。
HPへのアクセスは1600件を超えた。「36年ぶりの甲子園出場だけに注目が集まるんでしょう」と目を細める。鈴木さんは当時、高校3年だったが甲子園に行けずに、今年こそは観戦したいと心待ちにする。開幕まであと2カ月足らず。「地域の人々の思いが盛りだくさんのHPにしたい」と力を込めた。=つづく
2月1日朝刊