(
英語版編集部注:「RobertConnell」とは、
空軍で
宇宙・ミサイル
部隊に10
年近く在籍していた
元将校のペンネームだ。
今回、この
人物がワイアードの『DangerRoom』に
初めて寄稿してくれた。)
制御を
失い、あと
数週間で
大気圏に
再突入しようとしている
米軍の「スパイ
衛星」について、
誰もがひどく
騒ぎ立てている。しかし、これが
実際に
人に
危害をもたらす
可能性は
極めてわずかだ。
2007
年だけでも、
軌道を
把握されている
物体のうち、
地球の
大気圏に
再突入したものは178
件あった。このうち、
実際に
人工衛星のペイロード(
搭載物)が
再突入したのは27
件だ。
大多数のケースでは、これらの
物体は
大気圏突入の
際に
熱によってばらばらになり、
地上に
到達するのは
非常に
小さな破片だけだ。
2007
年に
撮影された
下の
動画は、コロラド
州デンバー
周辺の
上空に
再突入したロシア
製ロケットの
機体の
映像だが、もともとは
円筒形だった
機体が
大量の
小さな破片に
分解する
様子がはっきりと
確認できる。
しかし、
時に断片が
原型を
保ったまま
再突入し、
発見されることがある。
下の
写真は、1997
年1
月にテキサス
州ジョージタウン
近くに
落下した『DeltaII』ロケットの
機体だ。
この
写真は
報告書『TheRealitiesofReentryDisposal』[
再突入した
不要物の
真実]から
引用したものだ。この
問題についてもっと
詳しく知りたいなら、この
報告書に
目を
通す価値はあるだろう。
最悪のシナリオは、
放射性物質を
積載した
物体が
再突入するケースだ。
事実、このような
事態は1978
年1
月に
発生している。ソビエト
連邦の
海洋偵察衛星『Cosmos954』がカナダ
上空で
再突入し、(ありがたいことに)
人があまり
住んでいない
原野に、
放射線を
帯びた
破片類をばら
撒いたのだ。しかし、この
事件以降、
上空からの
脅威に
対処するため、
一連の
手順が
作成された。
まず最初に、米軍の統合宇宙作戦センター(JSpOC)が、断片が落下するおそれがある地域を予測し、軍および文民幹部に連絡する。落下物が米国またはカナダに落下する場合は、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)および米連邦緊急事態管理庁(FEMA)、ならびにカナダのFEMAに相当する機関に通知される。そのうえで危険性の大小が判断され、多少なりとも危険があれば非常事態計画が作成される。
JSpOCは、物体の再突入について警告も発する。これらの警告は『TIP』(TrajectoryandImpactPrediction、軌道および落下予測)メッセージとも呼ばれ、落下のおよそ4日前から一定の間隔で発される。
TIPは普通の分類データとして宇宙監視データを提供するウェブサイト『SpaceTrack』に掲載され、誰でも閲覧、ダウンロードが可能だ。アクセスにはアカウントを作る必要があるが、簡単に誰でも無料で利用することができる。
いくつか指摘しておきたいことがある。まず、再突入予測の対象となるのは、米軍の探査ネットワークが追跡可能な大きさを持つ物体だけだ、ということだ。通常の場合、これは直径10センチメートル(ソフトボールぐらいの大きさ)以上の物体ということを意味する。
もう1つは、米国政府に関する限り、人工衛星の一覧表にない物体がいくつかあり、それらについては再突入予測の通知が行われないということだ。そして、現在世間が騒いでいるスパイ衛星は、これにあたる。
もちろん、低周回軌道にあるスクールバス程度の大きさの物体なのだから、アマチュア用天体望遠鏡と少しばかりの忍耐心があれば観測は可能だ。アマチュア観測家がこうした「リストにない物体」を数多く追跡しており、その位置を特定したこともある。この件に関しては、『SeeSat-L』のメーリング・リストが最高の情報源となっている。
ここで興味深い事実をお知らせしよう。宇宙にある通常の物体すべてを追跡し、TIPメッセージを発する米軍の技師は、「スパイ衛星」の位置に関する情報にアクセスが許されていない。実際、この件についてはアマチュア観測家の方がよっぽど詳しい。
リストにない人工衛星の追跡と再突入の予測は、まったく異なる部門が担当している。だから今回のスパイ衛星騒動について、情報を隠していると非難されるべきなのは、軍の職員ではなく、実際には誰でも観察できる物体に関する情報を隠すことに固執している国家偵察局(NRO)の職員なのだ。
皮肉なのは、情報を秘密にしたために、メディア関係者すべて(そしてすべての自称「分析家」)が、好きなようにでっち上げた話が横行し、その結果、通常の機密扱いではない物体以上に、この物体に関する情報が知れ渡っていることだ。