福田康夫首相は29日の衆院予算委員会で、揮発油(ガソリン)税などの暫定税率の期限を5月末まで延長する「ブリッジ(つなぎ)法案」の提出について、「中身は承知していない」「内容に関与する立場にはないし、必要もない」と重ねて強調した。(酒井充)
首相は言葉の使い方が巧みだ。昨年末には薬害C型肝炎患者の救済策として、自民党総裁として与党に議員立法を指示したことを誇示した。ひるがえって、ブリッジ法案への対処では自らの関与を否定した。最大の理由は「与野党で話している最中だから」「与党から『任せてほしい』といわれた」からで、党総裁としても危急の課題に首を突っ込まないことを宣言したともとれる。
民主党は暫定税率廃止で「ガソリン代を25円下げる」と俗耳に入りやすい言葉を使い、平成20年度予算案など国民生活全般にかかわる法案審議の場を「ガソリン国会」と位置づける。民主党が強硬なままでは、首相らが懸念するように、暫定税率の期限が切れる4月以降、国民生活に混乱が生じることは必至だ。
首相が前面に出ないことで、問責決議案提出をちらつかせる民主党の攻撃をかわす思惑もうかがえる。それにしても歳入関連法案(日切れ法案)の審議が始まる前に暫定税率の期限そのものを延長する法案を出すことは、常道とはいえない。
国民生活を優先するためにあえて実行するならば、政府・与党のトップである首相の説明は欠かせないが、首相は、ブリッジ法案提出の動きを「新聞では見ている」とも言い放った。首相の態度は、組織が難題に直面したとき、トップが「オレは関係ない」と言い張っていることに等しい。
福田内閣の支持率が下降したのは昨年12月、年金記録統合の3月完了を「公約というほどのものか」と述べたころからだ。
新テロ対策特別措置法案の衆院本会議採決を欠席し、同法案を「重要と思っていない」と切り捨てた民主党の小沢一郎代表に事態打開の秋波を送る首相は、一方で自らリスクを負ってブリッジ法案に理解を求める選択をしなかった。首相側は29日夜、与野党決裂でブリッジ法案が提出された後の記者団の取材要請にも応じなかった。