大手企業6社の株の大量保有報告書を提出したテラメント(川崎市)の社長(48)が毎日新聞の取材に応じ、所持金が約2000円しかなく、自宅マンションの家賃(月約9万5000円)さえ滞納している事実を明らかにした。資金的裏付けがないのに同社が20兆円超の株式を購入したとする報告書が今も金融庁の電子開示システム「EDINET」に掲示されており、制度の脆弱(ぜいじゃく)性が鮮明になった。【堀文彦、村上尊一】
社長は金融庁にも同様の説明をしている。取得が虚偽だった事実が裏付けられ、証券取引等監視委員会は金融庁と連携し、金融商品取引法違反(大量保有報告書の虚偽記載)の疑いで調査に乗り出す模様だ。
法人登記簿によると、同社はIT(情報技術)システムの開発・製造などを目的に昨年11月設立され、資本金は1000円。社長は28日、登記上の本店で自宅も兼ねる川崎市の5階建て賃貸マンションで取材に応じた。
社長は「ITを総合的にコーディネートするため、昨年11〜12月、リーマン・ブラザーズ証券に『6社の株式の51%を取得したい』と電話注文した」と説明。取得できていると思い込み、25日午後4時12分に、自宅のパソコンから報告書をEDINETに送信した。その後、6社の広報担当者に電話し、取得の事実を会社側が把握しているかどうかも尋ねたという。
一方で「手元で動かせる現金は2000円か3000円。家賃も2カ月滞納している」と資金がないことは認めた。それでも「私が使えるお金がどこかにプールされていて、そのお金が流れてくる」などと今後、報告書通りに取得できる可能性を強調。金融庁は27日に訂正命令を出し、EDINET上にも掲載しているが、社長は応じていない。金融商品取引法には金融庁に削除する権限がなく、現時点でも虚偽の内容が掲示されている。
リーマン証券広報部は「テラメントからも社長からも注文を受けていない。取引に必要な口座も開設していない」としている。
◇貯金3000円 日雇いバイト中
社長との主な一問一答は次の通り。
−−資金は。
貯金を含め2000円か3000円。人材派遣会社に登録し、日雇いのバイトをやっている。
−−なぜ株を買えるのか。
出所はオイルマネーだと思う。
−−関係は。
(直接関係がないため自分でも)分からない。
−−知らない誰かが資金提供してくれる。
そうそう。そういう構図。でなきゃ証券会社が注文受けても買わないですよ。
−−金融庁は虚偽だと認定したが。
虚偽なら(金融庁が)私の大量保有報告書を取り下げるべきだ。
−−株取引経験は。
20代後半に1度買っただけ。
−−経歴は。
金沢大学工学部卒。音響機器メーカーなど数社に2〜13年勤務した。今、従業員は一人もいない。
▽EDINET(エディネット) 上場企業の有価証券報告書や、株式を5%以上保有した際に提出される大量保有報告書などを無料で閲覧できるインターネットサイト。金融庁が01年6月に開設した。事前に登録した法人や個人なら金融庁のチェックを受けることなくパソコンで開示資料を提出でき、そのままの内容が掲載される。事後チェックはあり、大量保有報告書が虚偽と判明すれば5年以下の懲役または500万円以下の罰金。