【ワシントン=有元隆志】ブッシュ米大統領は任期中最後となった28日の一般教書演説で、外交・安全保障政策について、イラク情勢に多くの時間を割き、米軍増派の成果を前面に打ち出した。北朝鮮についての言及はなく、ブッシュ政権の「レガシー(遺産)」は、イラク戦争に懸かっていることを強く意識した内容となった。
「昨年、多くの人は暴力を阻止することは不可能だと言った。1年後、テロリストによる攻撃は減り、民間人の死者数は減少した」
大統領は演説のなかで、「昨年」と、「今日」を繰り返し使い、1年間で治安が改善されたことを力説した。昨年、増派の効果に疑問を投げかけ、段階的撤退を主張した議会多数派の民主党に対し、増派に踏み切った決断の正しさを誇示してみせた。
1年前の時点では、大統領は追いつめられていた。イラク情勢は改善するどころか悪化し、米軍の死者数も増え、米国民の不満も強まっていた。大統領は増派を決断し、イラク駐留多国籍軍に任命したペトレイアス司令官に委ねた。
その結果、イラク国内で活動する国際テロ組織アルカーイダを「敗走」に追い込み、2万人の兵士が帰還できるようになったと報告できるまでになった。
ただ、それ以上の撤退に関しては「現地の状況」と、現地司令官の勧告によるとして、具体的な期限は示さなかった。大統領も認めるように、治安の安定を継続するためには、「なお困難な戦い」が待ち受けている。
大統領はこれまで「中東の民主化の拡大」などの構想を掲げてきたが、ライス国務長官を中心に外交政策は「現実路線」に戻っている。
北朝鮮政策でもかつては、「悪の枢軸」(2002年)と名指ししたり、イランやジンバブエなどと並記し、人権抑圧を批判した(06年)。この日の演説で北朝鮮に触れなかったのは、核問題をめぐる6カ国協議が膠着(こうちゃく)状態にあるなか、早期再開を目指すためにも北朝鮮を刺激するのを避けようとしたものとみられる。
また、中東和平ではイスラエルとパレスチナ間の紛争終結へ向けた和平協定のため、「米国としてできることはなんでもする」と述べ、任期中の妥結を目指す姿勢を示した。
いずれの交渉も実現は困難であり、同じく2期務めたクリントン前大統領も任期最後の年、北朝鮮、中東和平で外交成果を挙げようとして失敗した。米政府高官が米ABCテレビに語ったところによると、ブッシュ大統領は「歴史は自分に味方している」と信じているという。
支持率が低迷し、共和党候補が大統領と距離を置くなか、そうした信念がいまの大統領を支えているようだ。大統領は演説の最後を「自由の力に自信を持って」と締めくくった。