吉川 裕子編集委員・
佐野 日出之記者 [
東京 29
日 ロイター]
前日銀理事(
国際担当)の
平野英治トヨタファイナンシャルサービス・エグゼクティブバイスプレジデントは29
日、ロイターとのインタビューで、2
月9
日に
東京で
開催される7
カ国財務相・
中央銀行総裁会議(G7)で、
市場がマクロ
政策面で
協調行動を
期待しているのであれば「
誤った
期待になる」と
述べ、
協調利下げは
考えにくいとの
認識を
示した。
米サブプライムローン(
信用度の
低い借り手向け住宅融資)
問題に
端を
発した
世界的な
金融資本市場の
混乱は
収まらず、
世界経済の
不確実性も
高まっている。
額賀福志郎財務相は28
日にも、G7では
世界経済・
市場安定のためにメッセージを
発信したいと
述べるなど
議長国としての
意欲を
示しているが、マクロ
経済運営は、
日米欧の
経済状況が
異なることから、
各国がそれぞれの
事情に
即して
運営することに
尽きると
強調した。
ただ、
日銀の
金融政策では、
将来、
事態が
深刻化するリスクが
高まれば
利下げも
選択肢として
排除すべきではないと
指摘。
最近の
為替動向は、
米国の
対外不均衡是正に
資する望ましい方向に
動いているとし、G7
声明を
変更する
要素はみあたらないとした。
インタビューの
概容は
以下の
通り。
──
金融資本市場が
世界的に
動揺している。
現状認識と
先行き。
「まだ、
混乱が
続いている。
先も
見えにくく
極めて不透明感が
強いボラタイルな
市場にみえる」
「
先行きについては2つの
見方がある。
時の
経過とともに
市場は
落ち着き経済も
安定を
取り戻すとの
見方と、
住宅市場を
起点とする
実体経済の
調整はむしろこらから
本格化するとの
見方がある。
目に
見える形で
出てくることで、
金融資本市場ではクレジット・スプレッドやリスクプレミアムが
拡大するなどの
事態が
起き、
問題はさらに
悪化するリスクもあるとの
見方がある。
前者が
望ましいが、
判断を
難しくしているのは、
前者の
通りいく
保証は
何もない。
問題が
悪化するかもしれないとのリスクも
結構高い」
──2
月G7のテーマは。
「サブプライム問題での市場の混乱をどのように理解し先をどう展望し、それに対する政策当局の構えをどうするかに尽きる。金融の混乱を介して実体経済が大丈夫かということが問われている。その情勢判断を行い共通認識を持つことが出発点になる。また、米経済が(問題の)起点だが、世界経済へのインパクトについて、しっかり議論していく必要がある。いわゆるデカップリングの問題もテーマになる」
──G7の政策対応は。
「政策を議論する切り口は3つ。金融システムそのものが問われている状況で、それをどうやって治めるかという問題。金融と実体経済は相互作用しながら負のモメンタムが働いている。その調整をどうやって和らげるかという問題。最後に政策協調のようなものがあらためて問われるだろう」
「このうち金融システムの問題については、情報開示し出すべき損失はきちんと認識し、何よりもき損された資本の増強を図ることが重要。そういう方向で、いま既に民間で対応が進んでいる。当局としてさらにエンカレッジすることだろう」
「調整の痛みを和らげる策は、金融・財政政策のマクロ政策になる。金融政策面では、米国も動き始めておりその対応は重要。難しいのは、今回、コアインフレが2%を大きく上回る状況のなかでどこまで下げられるのかというジレンマを抱えている。ただ、今の物価状況はかなりの部分がエネルギー価格の上昇から来ており、経済についてはインフレ的な影響を及ぼす面もあればデフレ的面もある。単に物価が高止まっているから金利が下げられないということでいいのか、あるいは思い切った対応が必要(となるかだろう)。最終需要に働きかける財政政策にも一定の役割はある」
「ただ、問題の本質が金融セクターにおける資本不足に集約されている。資本の増強も含めていかに早く金融システムの安定を取り戻させるかが何よりも一番重要で、マクロ政策だけで、今直面している問題を解決することはできない」
「政策協調についても、問題の性格に対する共通の理解にたってそれぞれの国が置かれた状況に即して金融システム対策を取りマクロ政策を運営することだ。それに尽きる。G7諸国が足並みをそろえて何かをすることは適当でないし、現実的でない。市場がそういう協調行動を期待しているのであれば、誤った期待になるだろう」
「なぜならば各国が置かれている状況が違う。日本は金融システムは動揺していない。しかし、外需依存型の経済成長のためマクロ経済的な面での影響がある。そこをどう考えるかだ。一方、欧州は、金融システムが不安定な部分があるが米国ほどではない。実体面では米経済減速の影響を間接的に受けるだろうが今のところは底堅い。しかし、物価水準はECBが物価安定の定義とする2%をはるかに超えている。米国と歩調を合わせて金利を下げたり、財政政策を取る状況ではない」
──ドル安が進行しているが。為替の認識は。
「金融システムが動揺していることで、ある種のドル不安が生じているのは事実だと思う。ユーロは一時のユーロ高が是正されている。為替の方向としては、(米国の)インバランス是正に資する望ましい方向に動いている。Vvはあるにしても、協調行動をとらなければならない環境ではない」
──G7声明は変わらないとみるか。
「(変える)要素はないだろう」
──市場の一部には協調利下げ期待がある。
「期待があるかもしれないが、そういう発想はどこからも出てこない。協調して利下げを打ち出せば、金融システム不安が収まるとも思わない。そういうことは考えにくい」
──日本のとるべき対応は。
「反射的に、米国の政策に追随することでは全くない。日本経済を健全に発展させるためのマクロ政策運営を行うに尽きる。外需依存型の成長パターンが続いており、外部環境の変化に相当影響を受けることは受け止めていかざるを得ない。問題は個人消費を中心とする内需に火ががつかないこと。底堅く成長しているが成長力が出てこないこと。日本経済の将来展望がより明確になり希望が持てれば、投資(が増える)するのではないか。そこが不透明で、大事なのは目先の減速をどうやって補うかといったような近視眼的なものでなく、人口減少社会での生産性向上など、将来を見据えた長期的な視点にたった議論と対応だ」
──個別金融機関の資本増強策では、場合によっては公的資金も必要とみるか。
「一般的にみて、(直撃を受けた)世界の主要な投資銀行の資本基盤などからすると、問題を的確に認識しディスクローズし対応を明らかにしていけば、自力で増資できるのではないか。この点でバブル崩壊後の日本の金融機関とは状況が違う」
「ただ、モノラインについては、影響が広範におよび、システミックな影響を持ちえるので、状況によっては選択肢の1つになるかもしれない」
──日銀の金融政策について。22日の福井総裁会見では低金利であるがゆえに金融政策に制約があるとは考えないといった趣旨の発言があった。利下げも視野に入っているとみてよいのか。
「厳しいリスク認識をそういう表現で明らかにされたのではないか」
「状況が深刻化するリスクが高まれば、下げるという選択も全く排除すべきではないと思う。もっとも足元はリセッションでもないし、実質金利はマイナスで金融政策は十分緩和的。今すぐどうこうということは全くない」
(ロイター日本語ニュース 吉川 裕子編集委員;編集 田巻 一彦)