◇ヒロシマの先例に学ぶ イ・イ戦争で使われ「100万人犠牲、5万人後障害」
イラン・イラク戦争で使われた毒ガス兵器の被害者の治療を続けているイラン人医師ら4人が、県内の医療機関などで研修を受けている。県内では旧陸軍の毒ガス兵器工場があったため、毒ガス治療研究が進む。イラン人医師らは「ヒロシマの治療、検診システムを学び、イランの被害者に生かしたい」と意気込んでいる。【大沢瑞季】
研修を受けたのは、病理学専攻の大学准教授や毒ガス被害の臨床医2人、看護師の計4人。専門に応じて、広島大大学院の病理学研究室や広島市内の病院などで最新機器や呼吸器系がんなどの治療法やケアについて学んでいる。
戦後、毒ガス被害者の検診を続けている呉共済病院の忠海分院では約4000人分のカルテを見て、症状の推移などを分析しイランでの医療に役立てる。また、被爆者を継続して検診している放射線影響研究所(広島市南区)も訪ね、検診システムが毒ガス被害者にも応用できるか探る。
日本では、同県竹原市の大久野島にあった毒ガス工場などで、製造にかかわった軍人や動員学徒など約3800人が今も健康診断を受けており、うち2894人が後障害の呼吸器系疾患やがんに苦しんでいるという。
◇広大大学院教授の交流きっかけに
06年6月、途上国の医療支援をするNGO「モーストの会」(同市東区)とイランを訪ねた広大の井内康輝教授が、イラン支援団体の医師と交流や共同研究を進める協定を結んだのがきっかけで研修が実現。井内教授は「広島には、世界でまれに核兵器と毒ガスという二つの非人道兵器の被害を受けた責任がある。学んだことを、イランに広めてほしい」と話す。
80〜88年のイラン・イラク戦争では、マスタードガスなどの毒ガス弾が使用され、約100万人が犠牲となり現在も約5万人が後障害に苦しむという。内科医のファラハナズ・ファラハティさん(32)は「ヒロシマでの経験をイランの同僚らに伝え、新たな治療につなげたい」と話した。
1月29日朝刊