2007
年12
月6
日にバンダイナムコゲームスから
発売されたニンテンドーDS
向け『テイルズオブイノセンス』は、
携帯ゲーム
機として
初めてテイルズの
本編、マザーシップタイトルとして
制作された
作品です。DSというゲーム
機でテイルズの
全てを
詰め込むために、
開発現場には
多くの
苦労がありました。そして
本作でも、CRI・ミドルウェアの
音声圧縮用ミドルウェア「救声
主」が
採用されています。
今回は、
開発を
担当した
熊本のアルファ・システムさんにお
邪魔し、
話をお
聞きしました。
その他の画像はこちらから『テイルズオブイノセンス』インタビュー
2007
年12
月26
日熊本アルファ・システム
本社■バンダイナムコゲームス
・
大舘隆司プロデューサー
・
稲垣武俊ディレクター
■アルファ・システム
・
佐々木哲哉社長・
櫻井剛プロセスマネージャー
・
深澤正俊チーフプランナー
・
安田拓也サウンド
■
自己紹介―――まずはそれぞれ
自己紹介を
お願いできますでしょうか
大舘:バンダイナムコゲームスの
大舘と
申します。PSPの『テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー』からテイルズシリーズに
関わりまして
本作で2
作目です。
今回は
制作プロデューサーという
形で
制作の
全般を
見ました。それ
以前はPS2の『デスバイディグリーズ
鉄拳:ニーナウイリアムズ』という
作品や、
元々はアーケードチームで
中大型の
機械、ナンジャタウンのアトラクションのディレクションなどをやっていました。
注:ヘッドマウントディスプレイを
使った
迫力のシューティング『ファイヤーブル』も
同氏のディレクションだそうです。
稲垣:バンダイナムコゲームスの稲垣です。今回はディレクターを務めさせていただきました。ビジュアル関係などにも少し触れました。テイルズシリーズでは『テイルズオブレジェンディア』でデザイナーをやりました。
櫻井:アルファ・システムの櫻井です。アルファ・システム側のプロジェクトリーダーを務めさせていただきました。テイルズシリーズは今回が初でしたが、他のスタッフは経験者が多くて助けられました。18歳の時にアルバイトで入って、PCエンジンのCD-ROMくらいからずっと仕事をしています。日本テレネットさんとシューティングゲーム、SCEさんと『幻世虚構・精霊機導弾』というシューティングゲーム、『高機動幻想ガンパレード・マーチ』や『エヴァンゲリオン2』、『絢爛舞踏祭』といった作品に関わりました。
安田:サウンド課の吉田です。音声や効果音の作成、BGM音源のマニピュレートを担当しました。アルファ・システムで開発した全てのテイルズに関わっています。
深澤:メインプログラマーを担当した深澤です。テイルズは今回が初ですが、以前は『エヴァンゲリオン2』、『暴れん坊プリンセス』などに関わりました。
佐々木:アルファ・システム代表取締役の佐々木です。今回は基本的には立ち上げ時の弊社側のプロデューサー的な仕事と、世に出すところの調整だけで、その他はほとんど現場のスタッフに任せていました。ですので私の仕事はバンダイナムコさんの未来研究所に行ってテイルズ・オブシリーズのラインナップ発表会に出席したり、一番最後の調整を見たり、そういった仕事でした。
■アルファ・システムとは
―――テイルズの話に入る前に、アルファ・システムの生い立ちを聞かせてください
佐々木:1988年に会社を設立しました。以来、プロデューサーという形でほとんどのタイトルに関わってきましたが、元はプログラマーで、PCエンジンの頃からPSくらいまでかなりプログラムの仕事もしていました。PSで記憶に残っているのは、ムービーデータが、1時間プラス、音楽ストリーミングデータが8時間、更にレンダリングされたインターレースのフルグラフィックが1500枚、みたいなゲームがあって、とてもCDに入りきらないような内容をサンプリングレートを変えたりして、ねじ伏せて収録する、みたいな事をやってました。プログラマーとして最後に担当したのはこれもPSの『幻世虚構・精霊機導弾』というガンシューティングなんですが、2人のプログラマで書いていたのが、たまたまメインプログラマーが2人とも辞めちゃって、それを何とか解析しながら完成させたということがありました。
―――なるほど。ではテイルズとの出会いというのは?
佐々木:元々テイルズシリーズというのは日本テレネットさんが作っていました。アルファ・システムはPCエンジンの頃からテレネットさんと一緒に仕事をしていて、ある時に人が足りないということで、そこからグラフィックだけ手伝ってくれないか? という話をもらったりして関係が始まりました。ある時に「こういうタイプのゲームを作りたいけど、忙しくて…」という話をいただいたのが『なりきりダンジョン2』だったという記憶があります。もう結構長い付き合いになりますね。
大舘:『なりきりダンジョン2』『3』、『テイルズオブエターニア』でグラフィックの一部をアルファ・システムさんにお願いして、PSPの『ディスティニー2』の移植、『レディアントマイソロジー』、そして今回の『イノセンス』で5作目でしょうか。
―――アルファ・システムさんとしては、ニンテンドーDSを手がけられたのは今回が初めてですよね
櫻井:そうですね。
―――では、基礎的な部分から実験していったということになりますね
深澤:そうですね。どこまで性能を引き出せるか、という実験をしていきました。
佐々木:DSだからといってハード的に他とそう違うわけではありません。ただ、どこまで性能が出るのか?という点は実際に動かしてみないと分からないところです。ポリゴンの出方もハードによって大分違っています。PSPなどでは割と気軽に描いても奇麗に見えますが、DSは逆に一生懸命やってもなかなかそうはいきません。その辺りでどこまで出来るかという部分は苦労したみたいですね。
―――ではバンダイナムコさんの側として今回アルファ・システムさんに任せたというのは?
大舘:アルファ・システムさんが技術的に安心できる開発会社というのは随分前から分かっていて、僕が担当した『レディアントマイソロジー』が先行して動いていました。その頃にちょうど僕の方でもう一本RPGを手がけることになり、アルファさんにお願いしたらリソース的には何とかなりそうということで、『イノセンス』の企画がスタートしました。ですから、もともと『レディアントマイソロジー』があって、それに平行する形で『イノセンス』もお願いします、という形でした。
―――『イノセンス』プロジェクトの始まりはいつ頃ですか?
大舘:最初に打診をしたのが2006年の3月か4月ごろで、正式にお願いすることになったのは翌5月です。そこから企画を練ったり、深澤さんの方でDSの基本的なライブラリを作ったりしてました。沢山スタッフを動員してさあ作るぞ、というのは2006年の年末か2007年の頭からですね。
―――テイルズシリーズの中で今作の位置づけというのはどういうところにあるんでしょうか。マザーシップタイトルとおっしゃっていますが
大舘:アルファ・システムさんにお願いしていた『レディアントマイソロジー』というのは弊社で言っているところのエスコートタイトルという位置づけです。テイルズというシリーズはこれまで沢山のタイトルが出ていて、それぞれにファンの方がいるわけです。「テイルズオブザワールド」という名前が付いた場合、そういった作品のファンの方に向けて、そのゲームを忘れないでもう一度世界観を楽しんで欲しい、そういう役割を持っているタイトルです。
大舘:それとは別にもう一本はちゃんと物語を立ててやりましょうというのが今作です。始まった当初はマザーシップやエスコートという区別がちゃんとあったわけじゃなかったので本編かどうかという意味では微妙でしたが、狙いとしては据え置き機系のテイルズのメインストリームと、もう一つ携帯ゲーム機系のメインストリームという2つの大きな流れを作りたい、ということでした。『テンペスト』もその文脈で作られた作品です。ですから『イノセンス』もその次の携帯ゲーム機系のテイルズというポジションでスタートしました。
■イノセンスのテーマとは
―――『イノセンス』を作るに当たってポイントとなったのはどういう部分でしょうか?
大舘:一番大きいのは、携帯ゲーム機向けにコンパクトにしたテイルズという単純な割り切り方だとユーザーさんの満足は得られないということです。『テンペスト』というのはコンパクトテイルズというコンセプトだったのですが、ユーザーさんが望んでいるのはコンパクトなテイルズというより、テイルズの記号性を全て含んだものなんじゃないか、ということです。『イノセンス』も当初はコンパクトテイルズだったのですが、途中で方針転換して、全て正面から、表現できる限界にチャレンジしようという決断をしました。
――音楽やボイスには相当注力されたということですが
大舘:そうですね、前作は戦闘にしかボイスが入ってなかったのですが、これも立ち上げのコンセプトがコンパクトテイルズということもあって、そのあり方を模索する中で最初から削ぎ落とされていました。前回はコンパクトにする為に何を落とすかという議論をしていたのに対して、今回は逆に全てを実現するために試行錯誤をしていて、ここが大きく違う部分です。やはり色々なものを全て収めるのは大変で、どこの容量を減らすか? モーションの容量を減らすか、音声データの容量を減らすか、ムービーデータの容量を減らすか、という話になりました。一番目に付きやすいのが音声で、音声データの容量を減らすにはどうしたらいいかという話になって、そこでCRIさんの「救声主」の話を聞いて、試してみようということになりました。ただ、既に音声を出すシステムは組み上がっていたので抵抗はもちろんありました。その辺りのエピソードは櫻井のほうに…(笑)。
櫻井:はい(笑)。2006年の12月くらいに「救声主」の話を聞かされたのですが、既に深澤の方で試作は終えて、本制作にも入る段階で基本的なシステムは構築できていた状態でした。でも、実際に救声主の音声を聞いてみると確かに良くて…。「ちょっといい」くらいだったら断れたのですが、「大分良かった」ので、あぁ、どうしようかな、と(笑)。結局、スケジュールの巻き戻しとクオリティアップを天秤にかけて、最終的に「救声主」でいこうということになりました。完成したものを聞くと、この決断は正解だったと思いますね。
深澤:自分たちで1からやるよりは、クオリティの高いミドルウェアに乗り換えて良かったですね。
大舘:2006年11月の段階で試作評価版というのが出来上がって、ボイスと音は『レディアントマイソロジー』のものが鳴っていたと記憶していますが、その段階で容量的に厳しいという感触がありました。その時点だとグラフィックの質を落としたり、色々とやり方はありましたが、作業を一か月くらい巻き戻して「救声主」でやってくれと、半ば泣き落しのような感じで、深澤さんに『アイドルマスター』のグッズを送るような寝技(?)を使いながら交渉した覚えがあります(笑)。
深澤:(アイドルマスターの)CDをいただきましたね(笑)。
―――「救声主」を使う前は任天堂標準のシステムを使われていたのですか
稲垣:それをベースにしたものですね。声をたくさん入れなきゃいけないとなった時にどうしようか、というのは結構頭の痛いところでした。「救声主」に乗り換えるのは難なくできましたね。特に技術的には苦労したところはありませんでした。
――――「救声主」が使われている箇所というのは?
深澤:一部のイベント部分の音声とエンディングの2か所に絞って使いました。本当は戦闘中にも使えれば良かったのですが、戦闘では描写の処理との兼ね合いもあって、任天堂標準ライブラリを使うことにしました。
――――――「救声主」にはADX(ステレオ低負荷モード)とAHX(モノラル高圧縮モード)という2種類のフォーマットがあるのですが、どちらを使われました
深澤:ナレーション全般がAHX、エンディングはADXです。イベントシーンでは、声には救声主、音楽は任天堂標準ライブラリ、といった使い分けをしています。
―――今回はKOKIAさんが楽曲を提供されましたね
大舘:実はもともとオープニングのテーマソングはKOKIAさんという話でオファーしていたんです。で、エンディングの話は最初の段階ではオファーには入ってなかったんです。もともとやる予定もなくて。でも、しばらくしてエンディングにも…
稲垣:曲を入れたいという話を、大舘に相談をして。
大舘:容量の問題もあるし、契約面もあるから、基本的には無理だよという話でした。ただ、あまりにもしつこいから、お前が容量確保の目途をつけろよ!という話をしたんです。多分エンディングにKOKIAさんの楽曲をどうしても入れたい、容量を確保したいという一心で、いろいろ調べて俺に教えてくれたのが「救声主」だったと思うんです。
稲垣:ボイスを入れるのか、エンディングの曲を入れるのか、どっちがいいの? ってずっと言われていて、どっちも欲しい、エンディングも欲しいんです、という話をしている時に、ちょうどインサイドのページで「救声主」を見つけて、「ああ本当に救世主だ」と思いました。実際にテストしてみると音もいい。容量の見積もりをしてもらったら、ちゃんと入るということが分かって、それでエンディングもやりましょうという話になったんです。
稲垣:ボイスに関しては他社さんのゲームでも喋っているのは結構あって、音声が若干聴き辛くても『テンペスト』よりは入るぞ、と思ってやっていたのですが、「救声主」がきっかけでさらに良くなりました。高音質、容量一杯に、ということで最初は120分くらいを予定していたのが、160分くらいの音声が最終的には入りました。
―――音質が良いのは前提条件として、容量の削減でも貢献できたということですね
大舘:最初のきっかけは容量削減ですが、テイルズの場合はユーザーさんが要求する音声というのは、役者さんの息づかいまで感じ取れるものなので、やっぱり容量を減らそうとして低いサンプリングレートでやると無理が出ます。演技が活きてこないと、感情移入ができない、キャラクターに思い入れを持てないといった事が出てきます。よく台本に「……」とか、「は……」というような息づかいとして表現されている箇所がありますが、役者さんはちゃんと収録で表現してくださるんです。そこを、レートを落とす事で削ってしまうのは失礼だし、残念な事ですよね。そこをちゃんと拾えるからこそユーザーさんが喜ぶようなキャラ作りもできるんじゃないかと思います。
―――主題歌にKOKIAさんを起用されたのは?
稲垣:僕が以前からKOKIAさんの大ファンだったからです。特に「調和」という歌が好きだったのですが、壮大なファンタジーの世界観を持つ曲なので、ぜひこの世界観で『イノセンス』の主題歌をやりたいというお願いをしました。そして書き下ろしていただいたのが「FollowtheNightingale」です。
櫻井:KOKIAさんも世界観からきっちり把握して作っていただいて。
稲垣:もう資料を山のように持って行って、お話や、街の設定、物語のテーマとか色々と説明して、打ち合わせの後も楽器のイメージや雰囲気といった質問を受けながら、答えとして出来たのがあのオープニング曲です。だからただのタイアップとは違います。エンディング曲も、物語の中でキャラクターたちがどう動いて、最終的にどんなエンディングになるかという話をして、そこにバッチリくるようなエンディング曲を書いていただきました。
大舘:エンディング曲は元々なかった話なので、作ってもらえるとは思ってなくて、KOKIAさんで既にある楽曲の中からお薦めの曲をピックアップしてもらう形でも、という話をしたんですけど、KOKIAさんは「いやいや作ります」と言っていただけたんです。最近はヨーロッパでの活動が長かったので、久しぶりの国内の活動で力を入れてくださったということもあるようです。ただ、容量の問題が解決しなければ、曲を書いていただいても実装はできなかったので、「救声主」がなければあの素晴らしいエンディングは生まれる事は無かったということだと思います。
―――今回は、ほぼフルボイス?
稲垣:メインストーリーの部分はお話を見せたいので、完全にフルというわけではありませんが、ほぼ音声は入っています。やはり中心となる部分はきちんと役者さんの演技を見せたいので。開発中に社内でもこんなに喋るんだ、という反応はありました。しかもこの奇麗な音声で。
大舘:恐らくメインストーリーの7〜8割くらいは入ってるんじゃないかな。
櫻井:実はそんなにいってませんよ。
大舘:いってないですけど、そんな風に錯覚するくらい喋っているということです(笑)。いまWebでアンケートを取ってユーザーの方からの声を頂いていますが、フリーコメントを見ると、こんなに喋るとは思わなかったという言葉を沢山頂いています。本編という位置づけのゲームをDSで出すのはどうなの? というユーザーさんの不安な声というのは事前に沢山情報として入っていたので、良い意味で裏切れたんじゃないかと思います。
―――まさしくマザーシップタイトルとしての思い入れがしっかり伝わった、というわけですね。
大舘:そうですね、ちゃんとしたテイルズだよ、というのが伝わったと思います。
稲垣:本当に、本当に助かりました。
―――逆に今後の作品はこれ以上でないと満足できないということにもなりますね
大舘:そうですね。音声を増やすとか、本当にフルボイスにするとか、そういう手段というのはありますが、やはり物量に任せて、ROM自体の容量を増やす方向だとやはり原価の方に跳ね返ってきますので、どこまでミドルウェアの方で吸収できるかというのが今後の課題かもしれません。
■今後のテイルズは
―――音以外の面で野心的に取り組んだ部分はどんなところでしょうか?
稲垣:グラフィックでも据え置き型に負けたくないというのは最初からありました。現実的に勝てるわけがないと言えばそれまでですが、DSだからこの程度だろう、という事は絶対言われたくなくて、アニメーションもポリゴンも据え置き機で作るのと同じように全部やり切ろう、というのはありましたね。
深澤:とりあえず最初の実験の段階でDSという枠を外して、どこまでできるのかということを探しました。その結果が『テイルズオブイノセンス』です。
大舘:全くの新作RPGであれば、「DSならこういうもの」じゃないの? と思って貰えると思いますが、テイルズという名前が付いた瞬間に、ハードの制約とかそういう言い訳はできなくなって、「テイルズであるからには〜」に変わるんです。開発の終盤はとにかく、「ユーザーさんがこれじゃあ納得しない」という言葉を常に意識していました。
―――その言葉には勝てないですよね(笑)。
大舘:最近はパブリシティの際にもネットの声というものを無視できないと思っています。Webで商品属性などを調べてアプローチされるお客さんがとても増えています。テイルズの場合、色々なところでファンのコミュニティが形成されているので、そこでどういう反応があって、どういう事が語られているかというのは本当に重要なんです。
大舘:最初の発表会で稲垣が作ったプロモーションビデオを見たユーザーさんの中で第一声が上がって、それがコミュニティの中で色々な話につながって、それをこちらで拾い上げて還元して、また東京ゲームショウなんかに合わせて新しいPVを出していく、そうするとまた反応がある、それをまた拾って活かしていく、今回はそういうアプローチでした。動画に関してもテイルズでこれだけ公式ホームページで動画を流したタイトルはありません。品質を理解してもらうために色々な形で情報を出していきました。
大舘:それはプレッシャーになる面ももちろんありますが、1年半も長いプロジェクトを続けていくと、自分たちの中で煮詰まる事ってやっぱりあるんです。溜まっているものを1回出して、反応を拾うというのは結構大事な事だと思います。だから、ネットコミュニティなどにも僕らは注目していて、それはちゃんと開発にフィードバックされて、『イノセンス』は作られたという風に認識してもらって良いと思います。
―――最初の発表会で、DSでマザーシップをやると言った時に、相当抵抗みたいなものはありましたよね
大舘:ありましたね。なかなか言いにくい事ですが、前作の『テンペスト』がコンパクトテイルズとして作られて、ユーザーさんに必ずしも満足していただけなかったという事実は実際あります。ですから今回はなるべく出て説明しようということで、商談会にも出て行って僕と稲垣が試遊台の横に立って、AmazonさんとかTSUTAYAさんのバイヤーの方々に一生懸命説明したり、汗をかきながら自分たちで動いて理解してもらうというのがありました。動画を沢山見てもらったのも同じ事ですね。
大舘:今回は有名な声優さんも起用しましたので、ユーザーの方にも「おっ」と思えてもらえたとは思います。そこで「救声主」を使ったというのもあって、これだけの人を呼んでおきながら、低いサンプリングレートでラジオみたいな音になったら申し訳ないなと。ヘッドホンで聴いたら据え置きと変わらないくらいですから。そういう意味でも良かったです。
―――テイルズの今後の展開を聞かせていただけますか
大舘:テイルズを色々なプラットフォームで出すという姿勢は恐らく変わらないと思います。テイルズはこうあるべきだというのは常に進化していて、その時代に合ったプラットフォームに合わせたテイルズを作るというのは今後も続いていくと思います。先日発表になった『テイルズオブヴェスペリア』も1つの通過点、『イノセンス』も携帯ゲーム機のテイルズの1つの通過点だと思います。この先どうなっていくかは常に考え続けて、そして常に変わり続けるものだと思います。
―――具体的に、テイルズでなくても構いませんが、技術的な面でも、コンテンツ的な面でも、システム的な面でも、次の挑戦があれば聞かせてください
大舘:『イノセンス』の最初に僕たちが合言葉的に考えていたのは「2007年のその時点での1番であろう」ということで、何事もそうですが、一瞬の輝きって凄いと思うんです。グラフィックにしても、音にしても、その瞬発力を自分の作るコンテンツには入れたいと思っていて、『イノセンス』は音にかなり救われて、戦闘システムにも瞬発力があったんじゃないかと思います。
稲垣:まだまだ主流とまではなっていませんが、ネットワークを使ったものには挑戦したいですね。これから整備されていくと普通になる日が来ると思います。やはり1番に作りたいというのがありますので、早め早めにやりたいですね。
大舘:ミドルウェアの話に戻りますが、通信を安定化させるライブラリがあるといいですね。特にPSPは通信量が少なくて、アクション系は若干厳しいです。それに単純に通信の部分は作りにくいので、通信する前のデータ圧縮、転送、相手側で解凍するようなライブラリがあれば用途は相当広がると思いますね。かなりヒントをあげたと思います(笑)。
―――いま何か注目している技術とかって何かあります?
大舘:弊社で出した『涼宮ハルヒの約束』で使った、画像に対して表情を付ける技術にはちょっと注目しています。特にテイルズなんかのキャラクターが強いゲームの場合に、藤島先生やいのまた先生が描いたキャラクターそのままを表情として出せるようになると面白いなあと思います。コスト的な利点もありますしね。決められた表情だけじゃなくて、もっとこうファジーというか中間の感情表現も出来るようになりますので。まだまだコストが高いので、使いやすい値段になると嬉しいですね。
大舘:3Dで顔のパターンにイラストを貼り付けて、鼻の位置や目の位置を合わせて、口の中の色とかを設定する、それだけで表情が作れるんです。「モーションポートレート」でしたっけ? この技術には注目しています。
大舘:あとCRIさんの「ファイルマジック」じゃないですけど、ROMの原価に直結するところで圧縮は大きな鍵です。現状は2ギガビットのROMは製造原価が極端に高くなるんです。弊社の事情ではありますが、製造原価が高くなると、もうどんな良いタイトルも海外には出せなくなる。そこで、通常2ギガビットのROMが必要なところを、これを使えば1ギガビットで大丈夫ですよ、というのを明確に謳えれば我々としては使う決断ができます。
―――なるほど。「ファイルマジック」に関しては少しずつユーザーさんについていただいていて、いろいろ利用法を吸収しているところです。圧縮率や使い勝手、ファイル管理といった部分はもう少し良くしていこうと考えています。
佐々木:ROMの場合アクセス速度があるから気にならないと思いますが、CD-ROMやDVDだとヘッドの動きの最適化があると良いかもしれませんね。
大舘:それはありますね。PSPのUMDの最適化ソフトが出たら絶対売れると思います。エミュレーターで確認はしているんですが、実際にテストのUMDが上がってきて愕然とします。しかもそういうのは最終段階だったりしてお手上げ状態なことがよくあります。そこを効率化できると色々と助かりますね。
■最後に
―――アルファ・システムさんとしては今後取り組みたいことはありますか?
櫻井:そうですね、まだまだテイルズシリーズは続いていきますので、もっといいテイルズを作っていきたいですね。ノウハウはたまっていきますし、技術もたまっていくのでクオリティは上がると思います。今回のようにミドルウェアも利用することによって、もっと違うところに労力を割けるようになります。必要のないところに時間を取られなくなるのは大切です。クリエイティブな部分だけに時間を割いていきたいですね。できれば『ゲームツクール』のようになれば(笑)。
安田:こういうミドルウェアは今回初めて音関係で触らせていただいたんですが、これまで音質面で色々な悩みを持っていたのを、こんなにも簡単に解決されたことが、感謝もありますが、なんで今まで頼らなかったんだろうという思いもありました。次からはどんどん活用させていただきたいと、つくづく思いました。
―――それでは他のゲーム開発者の皆さんに一言コメントをいただけますか?
深澤:同じプログラマの方にということでいくと、色々な所にこだわりたくなって自分で作りたくなるというのは非常によく分かるし、技術者としての性なんでしょうけど、そこをなんとか堪えてゲームを良くする事に時間を使いましょう、ということを言いたいです。
安田:今回は「救声主」を使わせていただいて音に関して非常にクオリティの高いものにすることができました。今までは余り使ったことは無かったのですが、いいものです。いいものですが、後戻りは出来なくなるので、今後ずっと使うか、それ以上のものを自力で作る事になってしまいますが(笑)、ぜひお薦めしたいです。
櫻井:ぶっちゃけ、ライバルなので、俺より先にぶっ倒れろというのが正直なところですけども(笑)。企画者として思うのは、ミドルウェアを含めて技術の全否定みたいになるかもしれませんが、企画技術を上げていって突き進んだ先にあるのは、チープなグラフィック、チープなプログラム、チープな音楽、だけど最高に面白いゲームだと思っています。ただ、それはかなり難しいので、必要となるのはトータルバランスですね。昔のゲームみたいに一点突破というのはなかなか難しいので、こういう技術を頼りながら是非良いものを作っていきたいですね。
稲垣:今回のプロジェクト、『イノセンス』をここまで完成度の高いものにできたのは「救声主」のおかげです。みなさんも、ぜひ使ってみてください。本当に、本当に助かったんです。完全に諦めていたようなところも、実現してもらって、やっと本格テイルズと胸を張って言える作品を作ることができました。
稲垣:さっきの話にもありましたが、ミドルウェアを活用することで本来のゲーム作りに集中できるのは凄くいいなと思います。ゲーム作りをしていく人間として、技術的な面で競争するというのも確かにありますが、考えてみれば今ってファミコンの頃に比べるとアイデア勝負することが少ないなと感じるところがあって、やっぱりハードが進化してしまったことで、見栄えのする技術の部分に時間を割いて、もっと根幹のアイデアに目がいかなくなっているのかなと思います。そう考えると、こういう素晴らしいミドルウェアにもっと頼って、ゲーム作りという部分をもっと伸ばしていかないといけないなと思いますね。
佐々木:今回は「救声主」が正に救世主になってくれたわけですが、それ以前に頑張って努力したところに現れたから救世主なのであって、最初から頼っていると、2人目の救世主は現れないよと(笑)。
大舘:ミドルウェアという存在自体、開発と共にあって、乗り越え難い障害を一緒に問題解決してくれる存在だと考えています。それが社内にあるか、社外にあるかの違いだけで、今回CRIさんとお付き合いしてみると、意外に相談に乗ってくれて、質問にもいい答えが返ってきました。ですから、怖れずにどんどんアプローチしてみるといいんじゃないでしょうか。
―――最後にゲームユーザーさんに向けてメッセージをください
深澤:とにかく楽しんでください、ということに尽きます。色々難しい事も克服して作った自信作です。
安田:本当に楽しめるゲームだということを、声を大にして言いたいですね。こんなに携帯ゲーム機で楽しいものはなかなかないと思います(笑)。
櫻井:今回の作品には色々なものを詰め込んだ本当の自信作なので是非楽しんで欲しいですね。調整も少し難しめですが面白いように調整しましたので宜しくお願いします。
稲垣:今回は「救声主」に協力していただいて、ボイスも据え置き型並みのボリュームを入れることができて、何度も言いましたが、携帯っぽいのではなくて、正統なテイルズをDSで再現できたと思います。是非遊んでほしいです。
佐々木:遊ぶと携帯ゲーム機という事を忘れてしまうようなゲーム内容になっています。グラフィックもそうですが、音声も携帯ゲーム機ではここまで出ないと思うような音声の量になっています。是非まだ遊んでない方は聴いてみて欲しいですね。
大舘:…以上のようなことがありまして『テイルズオブイノセンス』というゲームは実現できました。色々な条件や環境が整わなければこういうゲームは作れないというのは自分自身も思うところです。DSというゲーム機では最高峰に到達できたと思います。少なくとも、最もよく喋るRPGでは追随を許さない、しばらくこれを超えるゲームは出ないと思っていますし、テイルズファンの方にも自信を持ってお届けできる作品になったと思います。そして今後ともテイルズを愛して欲しいと思います。
―――どうもありがとうございました
2007年12月26日熊本アルファ・システム本社にて収録
(C)いのまたむつみ(C)2007NBGI
株式会社CRI・ミドルウェア
http://www.cri-mw.co.jp/
「救声主」に関するお問合せ先
http://www.cri-mw.co.jp/inquiry
TEL:03-5414-3011
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