中国共産党以外の政党が禁じられた中国で、多党制による民主選挙の実施を求めて、南京師範大学の元副教授、郭泉氏(39)が昨年12月、新しい政党「新民党」の設立を宣言した。当局による弾圧の危険を冒して政党設立を宣言した狙いは何なのか。郭氏に聞いた。【南京(中国江蘇省)で大谷麻由美】
−−新民党の目標は。
多党制による民主選挙、全国民の利益を図る経済政策、土地私有化だ。共産党をつぶそうとするのではない。中国の腐敗、貧富の格差などあらゆる社会問題は、権力バランスの欠如が原因だ。一党独裁で自らを変革することはできない。
−−この時期に設立を宣言した理由は。
08年の北京五輪は中国民主化を推進する好機と考えた。世界中から注目が集まり、政治と経済の発展に期待が寄せられる。しかし、中国には人権問題や生活に密着した問題が山積だ。共産党だけで問題を解決するのも、民主化を進めるのも不可能だ。だから、庶民と共に立ち上がった。
−−あなたは反日活動を行う若者の過激な民族主義者「憤青」(怒れる若者たちの意)の一人でもある。
日本人の建立した記念碑を破壊したこともある。政府に建立反対を求めたが回答が無かったから行動で示した。これが憤青の特徴であり、新党結成と通じる。中国人は現体制への恐怖から行動を起こしたがらないが、私は怖くない。副教授職から大学の資料室に左遷されて、月収は3分の1以下に減った。新党設立後も監視は続いているが、問題はない。
【略歴】郭泉氏 68年南京市生まれ。96年南京大社会学部卒。同市中級人民法院(地裁)で刑事事件の裁判官を務めるかたわら、同大大学院で中国哲学を学び、南京師範大文学部副教授となったが、07年に資料室勤務に異動。
◇当局の大きな妨害なし 北京五輪控え国際社会を意識?
中国の憲法は「中国共産党の継続的な指導」がすべての前提であると規定する。一党独裁に反する新党結成は憲法違反と位置付けられる。昨年12月17日、郭氏がインターネット上などで設立を宣言した「新民党」の動きは、中国国内のメディアでは一切伝えられないが、英「フィナンシャル・タイムズ」紙や海外の中国語紙などが報じた。
党の全容は不明だ。郭氏は04年末から党規約の作成に入り、インターネット上で約100人が参加して完成させたとしている。党の主張の中心は国営企業を解雇された労働者の権利擁護など、経済成長の波から取り残された層を対象にした格差解消が中心。郭氏は、工場労働者、農民、退役軍人など約1000万人の支持者がいると主張する。
中国では広く携帯電話やインターネットが普及し、全国各地の知識人同士や労働者階層との連携が容易になってきている。こういった背景も、新党結成の動きを後押ししているとみられる。
中国では98年「中国民主党」が結成を宣言したが、主要メンバーは拘束され懲役刑となった。「新民党」設立はこれ以来の野党結成の動きとみられる。郭氏の活動に対して、今のところ当局による大きな妨害はない。北京五輪開催を間近に控え、国際社会の目を意識しているとみられる。しかし、五輪開催後に新党の活動に対する弾圧が始まる可能性は否定できない。【大谷麻由美】