◇自前で販路開拓の農協も
全農山形と全農庄内の統合の狙いには、販売力の強化があるが、庄内地域では、全農に頼るだけでなく、独自に販路を開拓してきた農家や農協もある。遊佐町農協(現・庄内みどり農協)はその先進例だ。
「イナゴがいるよ」「こんなに雑草があるなら最低限の除草剤は必要だね」
昨年7月、首都圏の消費者らがバスで遊佐町内の田畑を見学して回った。町内の約500戸では、共同開発米「遊You米」が栽培されている。米は生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(新宿区)向けに直送される。消費者の案内役を務めるのはその生産者たちだ。交流イベントは30年以上も続けられてきた。
同町上蕨岡(かみわらびおか)の農業、佐藤義明さん(53)は「『こういうものが食べたい』『どうして今年の米は白っぽいの』などと消費者の声をじかに聞き、話し合えることが大きい。(説明して)安心できる米を作る上で最低限必要なコストも理解してもらえる」と話す。
取り組みの発端は69年ごろにさかのぼる。米の過剰で生産調整が始まり、当時の蕨岡農協の池田源詮(げんせん)組合長は将来、米価が下がると予測した。庄内経済連への販売委託だけに頼らない独自の販売網を模索し始めた。
71年、食料品の共同購入を始めていた首都圏の生活クラブにササニシキの出荷を開始した。米には産地や生産者の明示もした。政府米としてさまざまな産地の米が混ぜられ、どこの産地か分からない当時としては画期的だった。
また、遊佐町農協の青年部のメンバーらは84年、新品種の研究に取り組んだ。新しい品種を生み出すことはできなかったが、代わりに県の奨励品種の「どまんなか」と「ひとめぼれ」をブレンドする「遊You米」が完成した。現在、同町内の米の出荷量の約半数に当たる5400トンが生活クラブに出されている。
遊You米は、県の主力品種「はえぬき」のコメ価格センターでの入札価格と比べ2000円程度高く販売される。遊You米も下落傾向は否めないが、佐藤さんは「(産地について理解してもらうことで)再生産に必要な値段を分かってもらっている」と話す。
遊佐町農協のような例は他にも増えている。鶴岡市の月山のふもとで米やジャガイモ、ナスなどを作る農事組合法人「月山パイロットファーム」も生活クラブに出荷している。同ファームの相馬大理事長は「全農庄内と山形が統合しても、何が変わるのか見えない。農家が将来に夢を持てる具体的なビジョンを示すことが求められている」と話す。
農協や農家が自前での販売に活路を見いだそうとする中、統合で新たに発足する全農の存在価値が試される。【釣田祐喜】
1月28日朝刊