今年は選挙の年になりそうだ。もっとも年始に何人かの衆院議員と話した限りでは「今年は衆院の解散はなく、09年9月の任期満了に限りなく近い総選挙になるのではないか」との見通しも多かった。いずれにしても「ねじれ国会」の行方と総選挙の時期が気になる1年になるだろう。
そんな年を迎えて年末年始にタイミングよく、前川崎市議会議員の山内和彦さん(42)の選挙戦に密着したドキュメンタリー映画「選挙」がNHKテレビで放映され、同映画のDVDと、山内さんの著書「自民党で選挙と議員をやりました」が発売された。
昨年、ベルリン国際映画祭で上映され、国内でも公開されて反響を呼んだこの映画のことはすでに随分と紹介されている。政治経験のない切手・コイン商の「山さん」こと山内さんが、05年10月の川崎市議補選(宮前区)に自民党公募の落下傘候補として立候補し、「組織選挙」「どぶ板選挙」に戸惑いながら初当選するまでを描いた作品。日本の民主主義や選挙のあり方を静かに問いかけている。
しかし山内さんは昨春の市議選には「自民党公認に必要な後援会組織を作れなかった」などの理由で立候補せず、議員生活をわずか1年半で終えた。現在は川崎市内で、東京都内の外資系企業に勤務する夫人と、生後6カ月の長男との3人暮らしを「主夫」として支えている。政治の喧噪(けんそう)から離れて、いま何を思うのか。それを聞きたくて今月中旬に会いに行った。
自宅近くのファミリーレストランでの待ち合わせに、山内さんは赤ちゃんを抱っこしてやって来た。話の途中で時々むずかる息子に慣れた手つきでミルクをあげたり、あやしたりして、主夫ぶりがすっかり板についた様子。
選挙戦を振り返って「自民党公認候補として選挙を戦ったことで、外にいては見えないものが見えた。組織選挙とはしがらみで、その正体は貸し借り、日本社会の縮図だ。いいしがらみは否定しないが、無駄なものが多い」と分析した。自身の映画を「ああいう名前を連呼するだけの候補者には入れたくない、という反面教師として見ることができる。あと10〜20年はこうした選挙は変わらないが、変化は起きている」とも。今後は「志のある若い世代の政界進出を支援するような活動をしたい」という。
映画「選挙」を見て、「どぶ板選挙」を批判することは簡単だ。だがふと気がつけば、貸し借り社会の立派な一員となっている自分を発見する。「何を基準に投票するのか」。国政選挙、地方選挙を問わず今一度、自分自身に問い直す年にしたいと思った。
1月28日朝刊