さる
水曜の
夜、サンフランシスコの『AxisCafe』から
大勢の
人が
出てきた。
当夜の
呼び物は
人気バンドでも、
腕のいいバーテンダーでもなかった。
彼らの
目当ては
講義、それも
物理学の
講義だ。
講義では、サンフランシスコ
州立大学の
海洋学者TobyGarfield
氏が、
海洋で
大きな波が
発生する
仕組みを
説明した。たとえば、AxisCafeから
約40キロの
地点にあるサーフポイント『マーベリックス』で
立つような
巨大な
波だ。Garfield
氏が
海底のスライドを
見せながら、
海岸はエネルギーを
散逸させる
機構だと
説明すると、
聴衆は
次々と
質問を
浴びせた――なぜ
波はセットで
やって来るのか?
異常波浪の
正体は?
米国ではどのようにして
波の
力をリニューアブル・エネルギーに
変えているか?
Garfield
氏が
海底のスライドを
見せながら、
海岸はエネルギーを
散逸させる
機構だと
説明すると、
聴衆は
次々と
質問を
浴びせた――なぜ
波はセットで
やって来るのか?
異常波浪の
正体は?
米国ではどのようにして
波の
力をリニューアブル・エネルギーに
変えているか?
このような
光景が、
全米の「サイエンスカフェ」で
繰り広げられている。
一般的には
退屈と
思われるようなテーマ、そして、
遺伝子配列、
暗黒物質といった
極めて専門的なテーマでも、カフェには
毎月のようにかなりの
聴衆が
集まる。
大波に関する講義の
休憩中、
医療コミュニケーションの
専門家であるJodieKasmirさんは
次のように
語ってくれた。「ここではさまざまな
科学分野に
触れることができる。ウニや
天文学といった
事柄について
学べる場所がほかにあるだろうか。それらを
研究する
科学者たちに
出会える方法がほかにあるだろうか。
電子メールを
送ることも
研究所を
訪ねることも、
現実的ではない」
サイエンスカフェは、
大人を
対象とした
科学教育の
盲点を
突いているように
思える。
何しろ、
学校のようにノートを
取ったり、
試験を
受けたりすることなく、
最先端の
発見やそれに
携わった
科学者たちと
触れ合うことができるのだ(しかも、バーでワインやコーヒー、ビールにもありつける)。
米国では現在、約60のサイエンスカフェが開催されている。最初のサイエンスカフェは1998年にイギリスで催され、そこからヨーロッパ各地、南米、オーストラリアにも広がっている。ほとんどが参加費無料で、『カフェ・シアンティフィーク』という国際組織を通じてゆるやかに結束している[日本にも運営組織があり、各地でカフェが展開されている]。
サイエンスカフェのコーディネーターたちによると、大した告知をしなくても聴衆が集まり、客層はティーンエイジャーから30代、リタイヤした人までと幅広いという。
ほとんどのサイエンスカフェが、気軽で打ち解けた雰囲気の中で催されている。地元の科学者が招かれて短い講義を行ない、大抵その後に聴衆がたっぷり質問できる時間が取られる。
マサチューセッツ州サマービルのバー『TheThirstyScholar』でサイエンスカフェを主催するBenWiehe氏は次のように話す。「すべての人に対話に加わってもらい、やり取りの輪に入ってもらうことが狙いだ。ただ質問するだけでなく、科学者に異議を唱えたり、話を脇道にそらしたりしてほしい」
カフェのテーマは科学全般に及ぶ。オレゴン州ポートランドで近々催されるサイエンスカフェでは、病気が大流行した際に生き残る方法が伝授される予定だ。過去にミズーリ州セントルイスで開かれたカフェでは、地衣類の知られざる生態が明かされ、ペンシルベニア州ピッツバーグでは計算生物学の各種領域が紹介された。
サイエンスカフェの多くは、大学、博物館などの教育機関がスポンサーになっている。教育機関にとっては、自分たちの研究やその専門家について人々に知ってもらう好機だ。
KateyAhmann氏は、ノースカロライナ自然科学博物館(ノースカロライナ州ローリー)が主催するサイエンスカフェを取り仕切っている。開始当初のテーマは、19世紀にアイルランドで広がったジャガイモの疫病に関する最新研究で、Ahmann氏は来てくれる人がいるかどうか心配したという。だが実際には、好奇心旺盛な35人の聴衆が集まった。
それから1年が経った現在、サイエンスカフェは毎月火曜の夜に、アイリッシュバーで催されている。参加者は最高120人にも上り、時間の都合で活発な議論を打ち切らざるを得ないことも多い。
「大人が楽しめて、同時に何かを学べるところだ」とAhmann氏は言う。「大人に受けるプログラムを提供するという発想が実に面白い」
サイエンスカフェの人気は、ボストンの公共放送局『WGBH』が制作する『NOVAscienceNOW』や『WIREDScience』など、科学をテーマにしたテレビ番組の新たな機会にもつながっている。サンフランシスコの公共放送局『KQED』制作の科学シリーズ『QUEST』は、先だってのAxisCafeでの講義で、海の大波をテーマにした番組の動画クリップを聴衆に見せた。
サイエンスカフェ主催者のWiehe氏によると、講義ではなくビールを目当てにバーに来た常連客を引き付ける[サイエンスカフェは、通常営業されている店の中で行なわれるので、店内には他の客もいる]には、映像がとりわけ効果的だという。Wiehe氏は、WGBHの教育普及活動にも携わっている。
「私が最初に簡単な説明をしても、サイエンスカフェが目当てでない人々は興味を示さない」とWiehe氏は話す。ところが、映像が流れ始めると「皆が注目し、笑いどころで笑う。そして、すべての人が夢中になる」という。