民間人として戦後初めて大阪市長に就任した平松邦夫市長は19日、就任から丸1カ月を迎えた。少数与党の市議会で厳しい運営を迫られるなか、「平松カラー」を打ち出せず、15日の定例会見では「ずいぶん長い1カ月だった」と漏らした。「守り」に徹したスタートとの見方もあるが、市の財政危機は待ったなしの状況のなか、今後も就任後初の当初予算案のとりまとめなど重要案件が続く。就任後1カ月を振り返り、平松市政の今後を展望してみた。
≪構想すぐに撤回≫
平松市長は今月10日、組織改革案を打ち出した。関淳一前市長の直轄組織だった市政改革部門を解体し、官房、情報公開機能を強化した市長補佐部門を新設する内容で、自らのカラーを初めて具体化させようとした構想だ。
しかし、それから1週間もたたない16日の市議会決算特別委員会で、この構想を「改革が後退するのではないか」と市議から批判され、「この案にこだわることなく、検討を進めていきたい」とあっさり撤回した。
少数与党のなかで厳しい議会運営が続く平松市長の立場を象徴する場面だった。市議会の答弁も「市議会のご意見をいただきながら…」などと議会を配慮した発言が目立つ。
2次破綻(はたん)が懸念される第三セクター、大阪ワールドトレードセンタービルディングなどについて、従来の外部委員会のメンバーを軸に、再建や処理策について検討する委員会の設置を決めたが、市長選では、公約の目玉だった特定調停の責任調査は宙に浮いたままだ。
≪幹部ら退職希望≫
市役所内での求心力はどうだろうか。平松市長は「改革のスピードを緩めるわけにいかない」と繰り返すが、水面下では、関前市長の改革を前線で支えてきた市幹部を中心に前倒し退職の希望者が相次ぐなど、改革の推進力は内側から鈍りつつある。
井越将之副市長の任期満了を受けた、来年度以降の副市長人事についても、「議会対応で連日突き上げられる状況では、現職や市OBの有力候補は、軒並み尻込みしている」(自民市議)という。
情報と意思決定を市長に一元化するため、関前市長が設けた市の最高意思決定機関、都市経営会議も就任後まだ開かれておらず、市幹部からは「個別の事業について指示がほとんどないので、施政方針から推測しながら、予算編成作業を進めるしかない。奇妙な感じだ」との声も漏れる。
≪「素人本領」いつ≫
平松市長の一番の強みは自らの言う通り「素人」であることだ。
市長になってからの口癖は「何で?」。周りの職員に繰り返し問いかけ、納得がいくまで話を聞く。平松市長は、「役所の常識について『何で』と疑問に思う気持ちを忘れたら、僕が市長になった意味がない」と話す。
こうした取り組みが少しずつでも奏功していけば、平松カラーが出始めるかもしれない。
しかし、市政改革は待ったなしだ。平成22年度までの現行の市政改革マニフェストを達成しても、市は財政危機からの脱却にはほど遠い。さらに次の市政改革の道筋を示す必要に迫られる。新方針を打ち出すタイミングが遅れれば、遅れるほど、市政改革の停滞に直結する。
さまざまな批判があるなか、市長としての立ち位置や交渉力、調整力が、今後ますます問われることになりそうだ。