JFEホールディングスとIHIが造船事業を統合し、国内最大の造船会社を誕生させる交渉に入ったのは、将来の船舶の供給過剰に備え、競争力強化が必要と判断したためだ。造船業界は現在、世界的な活況を呈しているが、中国が強気の設備投資を推進し、供給過剰に陥る恐れも指摘されている。国内各社は世界レベルで見れば規模は決して大きくないため、この動きが一段の業界再編を促す可能性もある。【小島昇、森有正】
日本造船工業会によると、世界の船舶受注量は07年1〜9月で1億2566万総トン。過去最大だった06年(9960万総トン)を既に大きく上回る。日本も06年は2255万総トンで、01年の約1.5倍に拡大した。中国など新興国が原油や鉄鉱石などの輸入を拡大し、海運需要が急増しているためだ。
「船バブル」とも呼ばれる中、中国は06年に建造量で韓国、日本に迫る世界3位に躍進し、「世界トップ」を目標に設備投資の手を緩めていない。日本の造船会社は4〜5年先までの手持ち工事を抱えてはいるが、「中国の勢いが続くと、いずれ供給過剰に直面する」という中国リスク論がささやかれている。
また、今回の統合交渉はJFEとIHIの事情も絡んでいるとみられる。IHIはプラント事業での大幅損失が発覚して事業の選択と集中を急いでおり、造船事業の再構築に迫られている。JFEも鉄鋼業界が再編に動く中で、鋼材の中長期の安定的な供給先を確保する必要がある。
造船業界の再編については、「設備が特殊で廃棄・転用が難しく、再編のスピードは今後も緩やかにとどまるのでは」(アナリスト)との見方もある。IHIと川崎重工業が01年に造船事業の統合交渉に入ったが、白紙撤回している。
しかし、JFEとIHIの統合が実現しても、新会社の売上高は世界最大の韓国・現代重工業の3分の1程度に過ぎない。中韓勢の規模の前に、生き残りをかけた国内の合従連衡を模索する動きが続く可能性はある。